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事実婚に相続権はあるのか?大阪高裁判決が示した相続の現実

30年連れ添ったパートナーでも相続できない。
そんな現実を改めて示す判決が、今年の1月16日に大阪高裁で出ました。
がんで亡くなった女性と事実婚関係にあった夫が妻の預金を引き出したところ、妻の妹から「事実婚の夫には相続権はない」と返還を求めた裁判で、大阪高裁は夫に預金全額の返還を命じました。

 

この夫婦は夫婦別姓を続けるために、入籍せずに30年もの長い間、夫婦として生活していました。
妻は亡くなる前に、「財産は夫と妹と半分ずつ分けてほしい」という内容の遺言を残していました。しかし、この遺言は捺印がなく、自筆証書遺言としての要件を満たさないと判断されたのです。

 

近年、価値観の多様化など様々な理由から事実婚を選択する夫婦が増えてきています。内閣府の令和3年の調査では、成人人口の2~3%が事実婚を選択しているそうです。

 

まわりも夫婦として認め、何十年連れ添ったとしても、日本の法律では戸籍上の夫婦以外には相続権を認めていません。
今回の判例は、その現実を改めて示したものといえるでしょう。
たとえ、故人がパートナーへの財産相続を望んでいたとしても、法的に有効な遺言書がないと認められないのです。

 

一方、相続人が誰もいない場合は、被相続人と特別な関係にあった人が家庭裁判所の判断で遺産の一部をもらうことができる「特別縁故者制度」という制度もあります。
しかし、この制度は相続人が誰もいない場合に限られており、子、父母、祖父母、兄弟姉妹、姪・甥がいる場合は認められません。しかも、家庭裁判所が選任した相続財産清算人が一定期間相続人を探して、本当に誰もいなかった場合に限り、特別縁故者が申し立てを起こして、家庭裁判所に認められて初めて分与されます(相続ではなく分与です)。
かなり時間も手間もかかります。

 

もしも本人が、親兄弟は誰もいないから「天涯孤独」だと思っていたとしても、実は法定相続人がいる場合もあります。
例えば次のケースです。
①既に亡くなったきょうだいに子供がいて、連絡先さえも全く知らなかった場合。
②小さい頃に親が離婚していて、もう1人の親の存在を全く知らずにいたが存命していた場合。
③親が離婚していて、両親は既に亡くなっていても再婚して子供がいる場合。
このような場合、法定相続人が全額を相続します。
長年連れ添った事実婚のパートナーであっても、法律上は相続権が認められないのです。
パートナーに財産を残すためには、法的に有効な遺言書が絶対条件になります。

 

では、法的に有効な遺言書さえ残せば全額相続できるのでしょうか?
答えは「No」です。
法定相続人が「そんなの納得できない」と思った場合、遺留分の請求をしてくる可能性があります。
遺留分は法定相続分の原則として半分です。そのため、パートナーに残せる財産は少なくなる可能性があります。

 

法律は、入籍をしていないパートナーには決してやさしい制度とはいえません。

 

事実婚を選択する場合は、このようなリスクも理解しなければなりません。
なんとなく籍を入れずにそのまま長い年月が経ってしまっている場合は、一度夫婦で今後のことをしっかり話し合ってみてはいかがでしょうか。

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