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 2020年4月から相続税のルールが追加されます!(配偶者居住権/概要-2)

今回の記事は「相続税」に関する内容のうち「配偶者居住権」についての内容です。


2月中旬に投稿した「2020年4月から相続税のルールが追加されます!」の続きの内容となりますので、その記事をご覧になっていない方はまずその記事をご覧いただければと思います。


配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家屋等に配偶者が居住していた場合には、その家屋を配偶者以外の相続人(例えば長男)が相続したとしても、配偶者居住権を設定すれば配偶者はその家屋に終身まで無償で住み続けることができるというものです。

 

今回は、概要の続きの記事となります。


配偶者居住権は文字通り、居住権という権利を配偶者が取得することになりますが、配偶者であれば100%その権利を取得できるかというとそうではありません。取得するためにはいくつかの要件や注意点があります。


配偶者居住権を取得するための主な要件は次の通りです。


(1)配偶者は、被相続人が所有する建物に、相続開始時において居住している必要があります。この要件は、例えば、配偶者が亡くなった夫(被相続人)が所有する建物に居住していたことを要件するもので、被相続人との同居が要件とされているわけではありません。


「居住」と「同居」は明確な線引きは難しいですが、「居住」は一定の住まいを定め、そこに住んで自分の生活を営むもので、「同居」は同じ家で共に起居(日常生活を一緒にしている状態)するというイメージになります。居住という概念の枠内に同居があるというイメージで良いかと思います。


(2)次のいずれかに該当するとき


①遺産分割協議により配偶者が配偶者居住権を取得するものとされたとき


②配偶者居住権が遺贈又は死亡贈与の目的にされたとき


③分割協議が整わない場合において家庭裁判所の審判により配偶者居住権を取得するとされたとき


①が最もベーシックな方法になるかと思います。


配偶者居住権は自然に発生するものではなく、一定の要件が成立して取得するものになります。

 


次にいくつか注意点をあげたいと思います。

1つ目は「居住建物が共有で所有」されている場合です。


民法第1028条には「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあってはこの限りではない」と規定しています。配偶者以外の者が一人でも居住建物の共有者に入っていればその居住建物に配偶者居住権は成立しません。この要件は相続開始時において、居住建物を被相続人と配偶者以外の者と共有していた場合、配偶者居住権の成立は認められないというもので、仮に共有者が配偶者だけだった場合には配偶者居住権の成立は認められます。


2つ目は「登記」についてです。配偶者居住権は遺産分割協議の成立、遺言や家庭裁判所の審判などによって成立するとのみ規定しており、登記することが必須要件ではありません。しかし、配偶者居住権を設定した居住建物にその旨を登記しないとその居住建物について物権(所有権・地上権・抵当権など)を取得したその他の第三者に対抗することが出来ません。配偶者居住権の登記をすることにより、それぞれの妨害停止請求権や返還請求権を行使できますが、登記をしていないとこれらの権利も主張できません。従って、配偶者居住権を取得する際の登記は必要と考えます。民法第1031条では「居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う」と規定しています。よって、登記は必要であると考えます。具体的には所有者が登記義務者となり、配偶者居住権を取得した配偶者が登記権利者となり、共同で申請することになります。

 


今回は配偶者居住権の概要、中でも成立要件や注意点をいくつか紹介していきました。来月も配偶者居住権について触れていきたいと思います。