2020年分及び2021年分の記事はこちら
■2021年 3月31日 消費税の総額表示義務がスタートします
■2020年 8月17日 2020年7月20日より自筆証書遺言の保管制度がスタートしました
■2020年 8月 3日 テレワーク長期化・・・通勤交通費は課税されない?
■2020年 4月 2日 2020年4月1日以後電子申告が義務化される法人がでてきます!
■2020年 3月16日 2020年4月から相続税のルールが追加されます!(配偶者居住権/概要-2)
■2020年 3月 2日 個人事業者で消費税課税事業者の方は注意が必要です!
■2020年 2月17日 2020年4月から相続税のルールが追加されます!(配偶者居住権/概要)
■2020年 2月 3日 消費税増税に伴い住宅ローン控除の控除期間が延長されています!
■2020年 1月15日 相続税の申告事績・調査状況が公表されました!
■2020年 1月 6日 2020年の税制改正大綱が公表されています!
2021年4月1日から消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際、消費税額(地方消費税額を含む)を含めた価格で表示する「総額表示」が義務付けられます。
対象となる取引は、消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示をするときには総額表示が義務付けられます。
事業者間での取引は総額表示義務の対象とはなりません。
また、総額表示の義務付けは不特定かつ多数の者に対する値札や店内掲示において「あらかじめ」価格を表示する場合が対象となりますので、見積書・契約書・請求書等については
総額表示義務の対象にはなりません。
対象となる価格表示は、商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等)、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビによる広告など、消費者に対して行われる価格表示であれば、それがどのような表示媒体により行われるものであるかを問わず、総額表示義務の対象になります。
具体的な表示例としては以下のような表示が「総額表示」に該当します。(標準税率10%が適用されるものを前提として示しています)
11,000円
11,000円(税込)
11,000円(税抜価格10,000円) など
ポイントは支払総額が表示されていれば良いという点です。
ちなみに、総額表示をしなかった場合の罰則は設けられていませんし、消費税法違反になることはありませんが、表示義務はスタートしますので事業者の方はご注意ください。
今回は消費税の総額表示義務についての内容でした。今年は更新できるときに更新するよう心がけますので、宜しくお願いいたします。
2020年7月20日より、自筆証書遺言の保管制度がスタートしました。
これまで、自筆証書遺言の保管は本人が保管しなければなりませんでした。
これにより、以下の問題点がありました。
■ 遺言書が紛失・亡失するおそれがある。
■ 相続人により遺言書の廃棄,隠匿,改ざんが行われるおそれがある。
■ これらの問題により相続をめぐる紛争が生じるおそれがある。
その対応策として新たに創設されたのが本制度です。
自筆証書遺言を法務局が保管することで、以下のような利点があります。
■ 全国一律のサービスを受けられる
■ プライバシーを確保できる
■ 紛失や改ざんの恐れをなくし、その存在が相続人に把握されやすくなる
■ 本制度で保管された遺言書は家庭裁判所の検認が不要なため、手続簡略化にもつながる
しかしながら、下記のような注意点があるため、本制度の利用にあたっては、よく検討することが必要です。
■ 保管申請のためには遺言者の出頭が必要
※高齢者の方が法務局(遺言保管所)まで出向くことは大変なケースもあるかと思います。公正証書遺言であれば、公証人が出張してくれます。
■ 遺言書の内容を法務局が判断することはない
※遺言書の内容の有効無効、登記に耐え得る遺言書か否かという相談には法務局は一切乗ってくれません。
遺言書を作成したいけれど、どの制度を利用して遺言書を遺そうかお悩みの方は、是非ご相談ください。
こちらの税務トピックス、しばらくお休みしておりまして申し訳ありませんでした。
不定期になるかと思いますが、更新再開いたします。引き続きお気軽にご訪問いただければ幸いです。
新型コロナウィルス感染症の影響で発令された緊急事態宣言により、当事務所におきましては3月末よりスタートいたしました「営業時間の短縮及び社員の在宅勤務推奨」を継続しております。
現在、感染者数が再び増加傾向にあり、収束が見通せない中で、同じように当初短期間の予定だった在宅勤務(テレワーク)を継続している企業も多くなっているかと思います。
ところで、オフィス勤務の場合、通勤定期券代等は1ヶ月15万円までは非課税とされますが、在宅勤務できる中で定期代の必要性が弱まっても非課税扱いで問題はないのでしょうか?
■一時的なテレワークでも本来の勤務地は会社・通勤しないとは限らず
従業員らに支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税とされています。
一時的なテレワークの実施により、従業員らが会社に出勤しない場合でも、①従業員らの本来の勤務地は会社であること、②テレワークの実施期間中に従業員らが必ずしも通勤しないとは限らないことから、非課税と処理して問題ありません。
■通勤手当の非課税判定に通勤の”実績”は関係なし
しかし、例えば3月末に通勤手当(6ヶ月分の定期券の金額)を支給したものの、テレワークを実施し、その実施期間が長期化している場合などでは、会社への”通勤”が前提の非課税措置の対象外になるものと懸念する声も根強いところです。
この点、通勤手当の非課税判定においては、通勤手当を支給した従業員らが、結果的に、通勤したor通勤しなかった(定期券を使用or未使用)という”実績”は関係ありません。
通勤手当の非課税判定は、通勤のための運賃等に照らして、”最も経済的かつ合理的な経路等で通勤した場合の金額”であるか否かがポイントの一つとなります。テレワークの実施期間が長期化したとしても、従業員らの出社の可能性を踏まえた上で、一定の合理性をもって支給する通勤手当であれば、基本的に非課税と取り扱って問題無いわけです。
このたびの新型コロナウィルス感染症拡大の影響は、”収束"といえるタイミングも不確かであり、会社側も従業員らの感染リスク等に配慮しつつ、テレワークの実施期間等を検討してきたところだと思います。こうした状況下にもかかわらず、後の税務調査において、従業員らの通勤回数が僅少であることや、その期間が長期にわたることなどを理由に、通勤手当を給与課税の対象とする指摘を行うことは想定されていないようです。
■勤務地が自宅で通勤不要なら源泉徴収
ただし、最近一般企業が導入を進める”テレワークの義務化”については、勤務地が自宅となり、通勤自体が不要となるため、非課税となる通勤手当として不合理と判断されることもあるかもしれません。
もっとも、原則の通勤形態をテレワークに変更した場合には、通勤手当の支給自体を廃止することが一般的と考えられるため、従業員らの出社の都度、交通費として精算するなどといった対応を執ること多くなるでしょう。
また、従業員らに対して、テレワークの実施期間中に係る定期券の払い戻しを促し、その払戻額を「テレワーク手当」等に代替する場合は、当然通勤手当とはいえないため、給与等として課税対象となります。
※新型コロナウィルス対応等に関する各種ご質問は随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
法人については、法人税等の申告について電子情報処理組織(以下「e-tax」と言います。)を利用している会社が多く存在します。国税庁によると平成30年度のe-taxの利用率は、法人税の申告で84.3%、消費税申告(法人)で82.6%であると公表しています。数字としては多い印象を受けますが、まだまだe-taxが利用されていない法人はあります。平成30年度税制改正により「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、一定の法人が行う法人税等の申告は、e-taxにより提出しなければならないこととされました。これを「電子申告の義務化」と言います。
電子申告義務化の概要をお伝えします。対象となる法人の範囲、税目、手続き等になります。
まず、法人の範囲ですが、上記にある通り一定の法人に限られています。(全法人が対象になるという訳ではありません。)具体的には、内国法人のうち、その事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額(以下「資本金の額等」と言います。)が1億円を超える法人が対象になります。これ以外にも相互会社や投資法人及び特定目的会社も該当することになりますが、一般的に多く見られるのは資本金の額等が1億円を超えるいわゆる大法人になるかと思います。
次に対象税目ですが、法人税及び地方法人税並びに消費税及び地方消費税が該当します。これも法人に関連するすべての税目という訳ではありません。これらの税目について、確定申告書、中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書、修正申告書、還付申告書が対象手続きとなり、これらの申告書や申告書に添付されている書類の全てが電子申告の対象になります。
電子申告の義務化の対象となる法人(以下「義務化対象法人」と言います)は、納税地の所轄税務署長に対し、適用開始事業年度等を記載した届出書(「e-taxによる申告の特例に係る届出書」)を提出することが必要です。また、減資により資本金の額等が1億円以下となった場合等により義務化対象法人でなくなった場合には納税地の所轄税務署長に対し、「e-taxによる申告の特例の適用がなくなった旨の届出書」を提出することになりますので、義務化対象法人に該当することになる場合、該当しなくなる場合には一定の届出書の提出が必要になります。
最後に、具体的な適用時期ですが、法人税では2020年4月1日以後開始事業年度に電子申告の義務化が適用され、消費税は2020年4月1日以後開始課税期間から適用となります。消費税では、決算期に関わらず同日以後開始課税期間に適用され、課税期間の特例選択をしている場合、同日より前に開始した事業年度開始日の資本金によって義務化対象法人かを判定することになりますので消費税の適用については注意が必要になります。
電子申告義務化の適用判定は事業年度開始の日の資本金の額等で行います。3月決算法人であれば、2020年4月1日の資本金の額等が1億円を超えるのであれば、2021年3月期に係る法人税は電子申告が義務となります。12月決算法人であれば2021年1月1日の資本金の額等が1億円を超えるのであれば、2021年12月期に係る法人税は電子申告が義務となります。
消費税も同様ではありますが、上記にある通り課税期間の特例を選択している場合は注意が必要です。例えば、12月決算法人が課税期間を1月ごとに短縮している場合、法人税は2021年1月1日の資本金の額等で判定しますが、消費税は2020年1月1日の資本金の額等で判定を行うことになります。仮に同日の資本金の額等が1億円を超えていれば、2020年4月から1月ごとに始まる各課税期間は電子申告が義務となります。たとえ2020年4月など期中に減資して資本金の額等が1億円以下になっても2020年12月までの各月の課税期間は義務化対象のままとなりますので、課税期間の特例を選択している場合、2020年4月1日前の資本金の額等も注視しなければいけません。
今回は電子申告の義務化についての内容でした。全ての法人が対象となるわけではありませんが、注視していく必要があります。
今回の記事は「相続税」に関する内容のうち「配偶者居住権」についての内容です。
2月中旬に投稿した「2020年4月から相続税のルールが追加されます!」の続きの内容となりますので、その記事をご覧になっていない方はまずその記事をご覧いただければと思います。
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家屋等に配偶者が居住していた場合には、その家屋を配偶者以外の相続人(例えば長男)が相続したとしても、配偶者居住権を設定すれば配偶者はその家屋に終身まで無償で住み続けることができるというものです。
今回は、概要の続きの記事となります。
配偶者居住権は文字通り、居住権という権利を配偶者が取得することになりますが、配偶者であれば100%その権利を取得できるかというとそうではありません。取得するためにはいくつかの要件や注意点があります。
配偶者居住権を取得するための主な要件は次の通りです。
(1)配偶者は、被相続人が所有する建物に、相続開始時において居住している必要があります。この要件は、例えば、配偶者が亡くなった夫(被相続人)が所有する建物に居住していたことを要件するもので、被相続人との同居が要件とされているわけではありません。
「居住」と「同居」は明確な線引きは難しいですが、「居住」は一定の住まいを定め、そこに住んで自分の生活を営むもので、「同居」は同じ家で共に起居(日常生活を一緒にしている状態)するというイメージになります。居住という概念の枠内に同居があるというイメージで良いかと思います。
(2)次のいずれかに該当するとき
①遺産分割協議により配偶者が配偶者居住権を取得するものとされたとき
②配偶者居住権が遺贈又は死亡贈与の目的にされたとき
③分割協議が整わない場合において家庭裁判所の審判により配偶者居住権を取得するとされたとき
①が最もベーシックな方法になるかと思います。
配偶者居住権は自然に発生するものではなく、一定の要件が成立して取得するものになります。
次にいくつか注意点をあげたいと思います。
1つ目は「居住建物が共有で所有」されている場合です。
民法第1028条には「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあってはこの限りではない」と規定しています。配偶者以外の者が一人でも居住建物の共有者に入っていればその居住建物に配偶者居住権は成立しません。この要件は相続開始時において、居住建物を被相続人と配偶者以外の者と共有していた場合、配偶者居住権の成立は認められないというもので、仮に共有者が配偶者だけだった場合には配偶者居住権の成立は認められます。
2つ目は「登記」についてです。配偶者居住権は遺産分割協議の成立、遺言や家庭裁判所の審判などによって成立するとのみ規定しており、登記することが必須要件ではありません。しかし、配偶者居住権を設定した居住建物にその旨を登記しないとその居住建物について物権(所有権・地上権・抵当権など)を取得したその他の第三者に対抗することが出来ません。配偶者居住権の登記をすることにより、それぞれの妨害停止請求権や返還請求権を行使できますが、登記をしていないとこれらの権利も主張できません。従って、配偶者居住権を取得する際の登記は必要と考えます。民法第1031条では「居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う」と規定しています。よって、登記は必要であると考えます。具体的には所有者が登記義務者となり、配偶者居住権を取得した配偶者が登記権利者となり、共同で申請することになります。
今回は配偶者居住権の概要、中でも成立要件や注意点をいくつか紹介していきました。来月も配偶者居住権について触れていきたいと思います。
3月に入り、個人の方の確定申告の期限が近づいてきました。と思いきや、先日2/27に国税庁が、「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の延長について」を公表しました。詳しい内容は こちら になります。
今回の申告納付期限は4/16(木)になります。期間は延長しましたが、申告納付期限をしっかり守るようにしましょう。
今回の記事は消費税についてです。個人事業を行っている方で消費税の課税事業者の方もいらっしゃると思います。消費税の申告期限は所得税と異なり、例年ですと3月31日となります。申告期限に少し余裕があるのは良いのですが、今回の申告では注意することが出てきます。それは2019年10月1日から標準税率の変更と軽減税率の導入、区分記載請求書等保存方式が始まっているという点です。
消費税の税率変更や軽減税率の内容については 2019年10月1日の記事「消費税の税率が変更されました」 に載せていますので合わせてご覧ください。今回は「区分記載請求書等保存方式」についてお伝えしていきます。
課税事業者が仕入税額控除を行うためには、区分経理に対応した帳簿及び請求書等の保存が必要になります。
消費税増税や軽減税率の導入に伴い、事業者の事務処理が煩雑化するため、税率ごとの区分経理については、2019年10月1日から2023年9月30日までの4年間は簡素な方法(この方法を「区分記載請求書等保存方式」と言います)が認められ、2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式」が導入される予定です。詳しい中身は後程お伝えしますが、「相手に対して発行する請求書、受け取る領収書・日々の取引を記録しておく書類は現状の考えに合った分かりやすい形式で残しておきましょう。」その現状の考えに合った分かりやすい形式の名称を、2020年3月段階では「区分記載請求書等保存方式」というイメージを持っていただければ充分かと思います。
次に実際の記載内容ですが、これは国税庁の軽減税率制度に関するQ&Aの一部抜粋 こちら をご覧ください。
従来の方式(「請求書等保存方式」)を維持しつつ「軽減対象資産の売上・仕入か」や「その税込み金額」を明確にした方法が「区分記載請求書等保存方式」になります。個人事業主の方であっても今度の確定申告は、これらの書類の作成・保存を行わなければなりませんが、中には受け取る領収書が区分経理されていない(軽減税率の内容である旨や税率の異なるごとに合計した対価の額が記載されていない)場合も存在します。本来的には、制度にあった書類ではないので、仕入税額控除が出来なそうですが、「区分記載請求書等保存方式」は受領者による追記が認められています。本来相手が記載すべき内容を受領者が追加で記入することが認められています。課税事業者の方は10月以降の請求書や領収書、帳簿を今一度確認していただけると良いかと思います。
今回は2019年10月1日から開始している「区分記載請求書等保存方式」についてお伝えしました。消費税の動きは今後も注視が必要になります。
今回の記事は「相続税」に関する内容です。
2019年9月17日に「相続税に関するルールが変わります」という内容の記事を投稿しました。民法のうち、相続について規定した部分を「相続法」と言いますが、平成30年の民法の改正は単なる相続法の改正にとどまらず、これに関連する相続税実務にも大きく影響を及ぼします。
今回はその中でも特に影響が大きそうな「配偶者居住権」について記事を書いていこうと思います。ボリュームが多くなるそうなので月に1度(おおむね月の中頃の予定)のペースで複数回に分けて紹介していこうと思います。今回は概要編です。少し長くなりますが、魅力的な制度になる可能性もあるのでぜひご覧ください。
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた家屋等に配偶者が居住していた場合には、その家屋を配偶者以外の相続人(例えば長男)が相続したとしても、配偶者居住権を設定すれば配偶者はその家屋に終身まで無償で住み続けることができるというものです。
例えば被相続人(父)と配偶者、長男という家族があったとします。配偶者と長男の仲が良ければ、長男が相続により家屋やその土地を取得(所有権を取得)したとしても、配偶者に対してその家に引き続き住ませることを許すでしょう。ただ、仮に配偶者と長男の仲が良くなかったとします。そうすると長男が相続により家屋やその土地を取得したとしたら、配偶者は元々住んでいた家から追い出されてしまう可能性があります。
それでは、親子の仲が良くないなら配偶者が元々住んでいた家屋や土地を相続すれば問題は無いのでは?とお考えになるかもしれませんが、相続により家屋や土地を取得することで、その分の金融資産(被相続人の預金等)は他の相続人(今回の家族構成だと長男)に分割されることが考えられます。もちろん、居住する場所は大切ですが、今後の生活資金にもなるであろう金融資産も大切です。さらに土地と家屋の評価額の合計が5,000万円で金融資産が1,000万円だとします。相続人が配偶者と長男である場合、法定相続分は1/2です。そうなると金融資産を1/2にして不動産を1/2づつ共有名義で取得することも考えられますが、仲が良くない親子が共有で取得することも難しいかもしれません。配偶者が5,000万円分の不動産を取得して、長男が1,000万円の金融資産を取得することも可能ではありますが、長男は納得しないかもしれません。配偶者もこの場合、不動産は取得できますが、金融資産は0円なので今後の生活が苦しくなるかもしれません。
そこで配偶者の居住及び老後の生活の安定を図ることを目的として配偶者の生存中は居住建物に無償で居住できる権利(配偶者居住権)が創設されたのです。配偶者居住権が創設されたことで、配偶者は元々住んでいた家に継続して居住(=居住地の安定を図る)でき、金融資産も改正前の民法に比べて確保(=老後の生活の安定を図る)できると考えられます。そのためにどうするかというと、家(家屋と土地)の評価(価値の算定)に少し工夫が入ります。簡単にいうとこの家の評価を2つに分割します。家には所有権という大元の権利が存在しますが、これを分割します。具体的には、価値を算定する際、「居住する分の価値」と「居住する分の価値以外の価値」に家の評価を分割します。このうち、「居住する分の価値」を配偶者居住権と呼び、配偶者が取得することで継続して住んでいた家に住むことができます。もう一つの「居住する分の価値以外の価値」は長男が取得します。
ここまで来ると、確かに配偶者にはメリットがありそうだけど、長男はどんなメリットがあるのだろとお考えになるかもしれません。ここで関わるのが配偶者居住権についての相続税の関係です。長男が被相続人の家(家屋と土地)を取得するとします。改正前までは、家を取得した場合、家の価値全てが課税の対象で金額も大きくなる可能性があるため、家を取得した長男が多額の税額を払うことも考えられました。その代わりに、長男は不動産の所有権を取得できますし、二次相続の場合の負担は少なくなります。今回の配偶者居住権の創設については、配偶者が取得する「居住する分の価値」=「配偶者居住権」は相続税の課税の対象として取り扱われることになります。長男が家を取得した場合(所有権という大元の権利を取得)従来の評価については、家全体に係る金額が課税の対象になりましたが、改正後は、形式的に所有権を取得したとしても実質的には「居住する分の価値以外の価値」だけを取得したと考えるので、家全体の価値から配偶者居住権の価値が減額されることになります。配偶者居住権の創設により、長男としては、所有権も取得できますし、二次相続の負担も減りつつ、今回の相続においても課税対象の金額が減額されることになります。今回の相続で長男の相続税の負担が減りますが、その分は配偶者が負担します。(課税の対象である配偶者居住権を配偶者が取得するため)ただし、配偶者には配偶者控除と呼ばれる税額軽減制度が存在しますので相続税の負担が無い可能性が高いです。さらに配偶者居住権は、配偶者が亡くなった場合、その権利が消滅します。権利が消滅して、配偶者の相続の時は課税の対象にはなりません。「居住する分の価値」が配偶者の死亡により、大元の所有権を有する長男に移転するイメージになります。このとき、長男は「居住する分の価値」=「配偶者居住権」を取得することになりますが、先に述べた通りこの配偶者居住権は配偶者の相続の時は課税の対象になりません。つまり無料でその権利がもらえるイメージになります。配偶者居住権の利用により節税の効果が見られます。ここまで来ると長男にもメリットがあることが分かるかと思います。
もう一度はじめの家族構成、金額構成に戻ります。被相続人・配偶者・長男で不動産5,000万、金融資産1,000万が前提です。長男が不動産の「所有権」を取得します。不動産を評価した結果、配偶者居住権に係る分が5,000万のうち2,500万で残りの価値が2,500万だとします。そうすると、長男は5,000万―2,500万=2,500万の「居住する分の価値以外の価値」と所有権を取得します。配偶者はというと配偶者居住権に係る2,500万円の「居住する分の価値」を取得でき、元々住んでいた家に居住し続けることができます。さらに金融資産についても長男のこれまでの相続分が2,500万円、配偶者の相続分が2,500万円と同じですので半額の500万円ずつに分割することになります。配偶者は居住地を確保しつつ、金融資産ももらうことができ、長男は金融資産の今回の受取は少なくなるものの、所有権を取得でき、相続税の負担を少なく(節税)することができます。
仲が良くなければという話だったのですが、仲の良い家族でもこの配偶者居住権という権利は使うべき制度になります。
今回の記事の内容は以上です。
今回は配偶者居住権についての概要に触れていきました。来月中ごろの記事も配偶者居住権についての記事を投稿する予定です。
2020年も始まって早くも1か月が経過しました。2月に入り、確定申告の時期が近づいてきました。個人事業者の方など確定申告が必要な方は少しずつ資料の準備を始めたり、税理士への依頼を検討していたりという時期かと思います。前々回の記事では税制改正大綱の内容をお伝えしました。今回は昨年の税制改正で創設された住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の控除期間延長についてお伝えしていきたいと思います。
2019年10月1日より消費税の標準税率が10%に引き上げられました。その結果、財布のひもが固くなりがちですし、特に大きい買い物は慎重になるかと思います。人生の中での大きな買い物といえば「住宅の購入」が頭に浮かぶと思いますが、昨年の税制改正では消費税引き上げに伴い、住宅ローン控除の特例が創設されています。増税後に住宅を購入された方や購入を予定されている方が対象となる制度です。
そもそもここでいう「住宅ローン控除」とはどういったものかというと、住宅ローン等を利用して住宅を新築、取得又は住宅を増改築し、令和3年12月31日までに居住の用に供した場合で、一定の要件に当てはまるときに、借入金残高の一定額を所得税額から控除するという制度です。所得税額から控除しきれない場合は、最大136,500円までの金額を個人住民税から控除することができます。簡潔にいうと、「ローンでマイホームを購入・リフォームすれば税金が安くなる」という制度ですが、住宅ローン控除は一定の要件に当てはまるか(適用が可能か)の判断が非常に難しくなります。この要件については購入を検討している段階や契約前に不動産会社や税務署、顧問税理士などに確認を取った方が良いかと思います。購入後・居住後に要件を確認したら適用することができないという場合も存在しますので、購入を検討している段階や契約前にチェックしておくと良いかと思います。また、個人事業主の方であれば毎年確定申告をするという思考があるかと思いますが、給与所得者(サラリーマンの方)はあまり確定申告を意識しないかと思います。サラリーマンは普段は年末調整をすれば年間の所得税が確定しますが、住宅ローン控除を受けるためには初年度は年末調整とは別に自ら確定申告をする必要があります。その他細かい要件などは別の機会にお伝えできればと思います。
昨年の税制改正で住宅ローン控除の控除期間が延長されました。改正前までは10年間税額控除が可能でしたが、今回の改正で13年間の控除期間になりました。概要としては「消費税等の税率が10%である場合の住宅を取得」「令和1年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住」「住宅借入金等特別控除の特例の適用がある」場合に従来より3年間控除期間が延長となります。控除される金額は「一般の住宅」「認定長期優良住宅・認定低炭素住宅」「東日本震災に係る特例の対象となる再建住宅」かで異なってきますが、今回は「一般の住宅」についてお伝えします。1~10年目の最大の控除額は年間40万円です。金額は借入金等の年末残高の1%になります。改正前は最大40×10年の400万円でしたが、改正により11~13年目の各期間でも控除が可能になります。そこでの控除額は次の①②のうちいずれか小さい金額となります。①「住宅借入金等の年末残高(4,000万円を限度)×1%」②「住宅取得等の対価(4,000万円を限度)×2%÷3」②については消費税2%増加分を3年で返還するものなので控除期間が伸びましたが、①②のうち小さい金額が取られるので改正前より得をするということではありません。今回の改正内容はあくまで消費税増税による住宅取得の心理的ハードルを下げ、景気の落ち込みを軽減する目的があります。
今回お伝えした住宅ローン控除は控除できる金額が大きい場合が多いですが、要件や必要書類など注意点が多く、普段確定申告を行う機会が無い給与所得者の方も適用初年度は自ら確定申告をしなければなりません。新保会計では個人のお客様の確定申告業務も承っております。初回相談は無料ですのでお気軽にご相談ください。
国税庁は2019年12月19日に「平成30年分の相続税の申告事績の概要」と「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」を公表しました。
まず、相続税の申告事績です。平成30年の①被相続人(死亡者数)は136万2,470人で前年比101.6%②相続税の申告書の提出に係る被相続人のうち、「相続税額のある」申告書に係る人数は11万6,341人で前年比104.1%「相続税額のない」申告書に係る人数は3万3,140人で前年比103.1%③課税割合は11万6,341人/136万2,470人で8.5%となりました。
平成30年に亡くなった方(=①)のうち、相続税の申告書を提出した方(=②)で相続税を納税した方の割合(=③)が8.5%という状況になります。こう見ると、相続税を納税する方は少ないように見えますが、8.5%という課税割合は過去最高の数値であり、年々増加しています。
次に相続財産の金額についてです。相続財産となるのは「土地」・「家屋」・「有価証券」・「現金・預貯金等」・「その他」といったものがありますが、30年分で金額の大きい上位3つは「土地」6兆818億円(相続財産のうち35.1%)「現金・預貯金等」5兆5,890億円(相続財産のうち32.3%)「有価証券」2兆7,733億円(相続財産のうち16.0%)となっています。「土地」→「現金・預貯金等」→「有価証券」の順位はここ数年変化がありませんが、土地が財産に占める割合は大きいので、相続税の納税義務者となるか否か、相続税の納税義務者となった場合の相続税の税額は土地の評価がとても大切になってきます。
最後に相続税の実地調査についてです。平成30年事務年度(平成30年7月~令和1年6月)における相続税の実地調査は、平成28年に発生した相続を中心に、過少申告や無申告が想定される事案等について実施されました。実地調査の件数は1万2,463件でこのうち、申告漏れ等の非違件数は1万684件で、非違割合は85.7%となっています。ようは実地調査が入るとかなりの確率で間違いが認定されるという事になります。申告漏れとされた財産の内訳は金額が大きい順番に「現金・預貯金等」が1,268億円、「土地」が422億円、「有価証券」が388億円となっており、追徴税額の実地調査1件当たりの金額は568万円となっています。
今回の記事の内容は以上です。
相続税は税理士によって税額が大きく変わる可能性がある税金となります。新保会計は相続税や贈与税についての業務も積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。
2020年がスタートしました。今年も定期的に記事を更新していきたいと思いますので宜しくお願い致します。
今回は税制改正大綱についてです。2019年12月12日に2020年の税制改正大綱が公表されました。
この税制改正大綱とはどういったものかというと、毎年12月頃与党から公表される翌年以降の税制について網羅的にまとめた方針になります。経済や国際情勢に合わせ、日本の税金の在り方を様々な面から分析した税制改正のための原案になるものです。
税制改正のおおまかな流れとしては、8月頃に各省庁から財務省に対して税制改正要望が提出されます。これは各省庁が財務省に対して翌年以降の税制に関しての要望を提出するものです。秋口に税制調査会が行われ、要望書の議論がなされ、12月頃税制改正大綱が公表されます。翌年2月頃税制改正法案が国会に提出され、3月頃国会で可決された場合、4月より施行されることになります。このように多くのプロセスを経て改正される税制ですが、税制改正大綱は翌年以降の税制の方針をまとめた内容で、ここで公表された内容が全て実際に施行されるわけではありませんが、おおまかな方向性は見えるもので注目すべき時点かと思います。2020年の税制改正大綱は全部で121ページもあり、全ての箇所が法人の活動や個人の生活に影響を及ぼすというものではありません。
例えば、法人が支出する「交際費についての損金不算入」の考え方が変わるかもしれませんが、対象となるのは資本金の額等が100億円を超えるような法人です。資本金の額等が100億円を超えるような法人はそうそうあるわけではありません。
他にも「国外中古建物の不動産所得」についてであったり、「所有者が不明な土地に係る課税上の対応」なども国民全員の生活にダイレクトに関わるような事案ではありません。
税制改正は税制全体の内容なので細かい内容もございますが、そういった内容をこの記事で紹介してもニーズが無い可能性もありますので、ニーズがありそうな内容について今後少しずつ紹介していければと思います。
今回は税制改正大綱や税制改正の流れについてお伝えしました。2020年も様々な点で変化があるかと思いますが、皆様にとって少しでも役立つような情報を発信していけたら幸いです。今年も宜しくお願いいたします。